離婚とお金
離婚にともない、お金に関することはしっかり考えておかなければなりません。
主に問題になるのは、
(1)慰謝料
(2)財産分与(夫婦で築いた財産を分けること)
(3)養育費
(4)年金分割
です。
1つずつみていきましょう。
(1)慰謝料
慰謝料とは、離婚によって生じる精神的苦痛に対する損害賠償です。
慰謝料が認められるのは以下のような場合です。
- 不貞行為
- 暴力
- 悪意の遺棄(長期間生活費を渡さないなど)
- 長期間にわたる暴言や嫌がらせ
- 性交渉の拒否
離婚の原因が、単に性格の不一致の場合、慰謝料請求はできないことがほとんどです。
慰謝料の額は、婚姻期間、違法な行為の動機、違法な行為が行われた期間と回数、被害の程度、子どもの有無、離婚に至る経過、双方の経済力や社会的地位などさまざまな要素から決められます。
ケースバイケースですが、100万~300万円になることが多いです。
ポイント1
離婚から3年経つと、時効により、慰謝料請求できなくなりますので注意が必要です。
ポイント2
離婚をするからといって、全てのケースで慰謝料が発生するわけではありません。
「離婚する→慰謝料をもらえる・払う」と誤解されている方が多いので注意してください。
自分のケースでは慰謝料が請求できるのか、弁護士に相談しましょう。
ポイント3
不貞行為の場合、それを証明するためにはとても強い証拠が必要です。
相手と性行為をしていることが推測できる証拠を見つけなければいけません。
メールで、「好き」、「愛してる」などのやりとりがある、特定の異性と外で食事をしているなどという証拠だけでは不貞行為があるとまで言えないので注意が必要です。
不貞が疑われる場合は、早めに弁護士に相談してどんな証拠が必要なのかアドバイスをもらいましょう。
ポイント4
暴力・暴言なども証拠が必要です。
怪我をされたら、必ず病院に行き、診断書をもらいましょう。
写真に残す、自分のメモに残すことも重要です。
警察署の生活安全課のDV相談や、自治体が行っているDV相談などもご利用ください。
相談した記録が証拠になります。
(2)財産分与
財産分与とは、結婚後、夫婦で築いた財産を、離婚の際に公平に分けることです。
◯対象となる財産
- マイホーム・車・家電製品・現金・預貯金・退職金
- 株・保険(解約返戻金のあるもの)など
〇対象とならない財産
- 結婚前に貯めた預貯金・結婚前に買った家電製品
- 親や兄弟姉妹などから贈与されたもの、相続を受けたものなど
財産分与の割合は、5:5になることがほとんどです。
夫婦で財産を半分ずつにするということです。
働いている方や毎月の収入の多い方が多く財産を受け取れるわけではありません。
ただ、数は少ないですが、個人の特殊な能力や努力で財産が築かれたと認められた場合には、5:5にならないことがあります。
ポイント1
対象となる財産が、どちらの名義であるかは関係ありません。
夫名義の預貯金であっても、結婚前に貯めたもの、贈与や相続で増えたもの以外は、財産分与の対象になります。
マイホームも、どちらの名義であっても夫婦の共有財産として、財産分与の対象となります。
ポイント2
不動産の場合、ローンの残額の方が、不動産の価値を上回っていることがよくあります。
財産分与は、主にプラスの財産しか対象にならないので、ローンの方が多い不動産は財産分与の対象から外されることになります。
ポイント3
お子さま名義の預貯金、保険であっても、お子さま自身が自分のお小遣いを貯めたものでなく、ご夫婦がお子さまの将来のために貯めている、保険をかけている場合は財産分与の対象になります。
具体的には、学資保険などが対象になります。
ポイント4
別居後は、お互いの財産が把握しづらくなります。
同居中に、相手名義の財産を総チェックしておくことが重要です。
(3)養育費
養育費とは、子どもが社会人として自立するまでに必要となる費用のことです。
子どもが成人(20歳)になるまで、高校を卒業(18歳)するまで、大学を卒業(22歳)するまでが養育費が必要となる期間の目安となります。
養育費の額は、双方の収入によって決まります。
養育費は子どもが生きていくために必要なものです。
たとえ養育費を支払う人に借金があるなど経済的に厳しい事情があったとしても、それを理由に養育費が免除になることはありません。
養育費は、まとめて支払うのではなく、離婚後、毎月一定額を子どもが20歳(18歳や22歳のこともあります)になるまで支払っていきます。
養育費を受け取る人は、子どものために大切に使いましょう。
ポイント1
養育費の支払いは長期間に及ぶので、途中でお互いの環境が大きく変わることがあります。
たとえば、退職、失業、再婚、病気、進学などです。
経済的な事情が大きく変化した場合には、一度決めた養育費を増やしたり、減らしたりすることが認められる場合があります。
ポイント2
養育費は、離婚後でも請求することができます。
相手が応じない場合には、養育費の問題だけで家庭裁判所に調停を申し立てることもできます。
調停で話がまとまらなくても、裁判所が「審判」を行って結論を出してくれるので、諦めずにご相談ください。
ポイント3
養育費は、毎月の支払いになるため、一度にまとまったお金がもらえるわけではありません。
しかし、長期間もらうと、大きな額になるのでしっかり取り決めておいた方がいいです。
たとえば、子どもが10歳で、毎月3万円を20歳までもらったとすると、3万円×12か月×10年=360万円です。
DVや不貞が原因で離婚した場合の慰謝料が、高くても約300万円程度であることからすると、養育費を軽く扱えないことがよくわかります。
養育費を調停で取り決めるか、公正証書を作成するかしておくと、将来養育費の支払いが滞ったときに給与の差押え等の手続きが可能になります。
(4)年金分割
簡単にいうと、年金の一部を離婚する夫婦間で分けることです。
厚生年金(会社員が加入)と共済年金(公務員が加入)が分割対象です。
国民年金のみの場合は対象になりません。
年金の額は、どのくらい年金保険料を支払ったかという「保険料納付記録」をもとに決められています。
この「保険料納付記録」を、夫婦間で、多く払った方から少ない方へ分割します。
たとえば、専業主婦・主夫やパートで働いていて、年金保険料を納めていなかった、納めていてもとても少なかったという方を例に考えてみましょう。
もし、年金分割が認められなければ、離婚後、この方のもらえる年金額はとても少ないものになってしまいます。
夫婦として共同生活してきたのに、離婚したら、一方は年金をもらえて、他方はほとんどもらえない。
それは不公平だということで年金分割の制度ができました。
専業主婦・主夫やパートで働いていた方も、もう一方の配偶者が会社員や公務員で年金保険料を納めていた場合には、その保険料納付記録を分割してもらうことで、将来の年金額が上がります。
熟年離婚の場合は、年金分割はとても重要です。
離婚する場合には必ず年金分割の手続きをとるようにしましょう。
ポイント1
調停や訴訟の場合、2分の1の割合で分割になることがほとんどです。
要は、半分ずつになります。
ポイント2
50歳以上の方の場合は、年金事務所でいくら年金をもらえるのか教えてもらえます。
ポイント3
再婚しても、分割された保険料納付記録は変更されません。
つまり、再婚によって、年金額が下がることはありません。
終わりに
離婚時に、お金のことをきちんと整理することはとても重要です。
お悩みになられている方は弁護士に一度ご相談ください。
離婚後では、相手名義の財産がどこにあるのかがわからなくなったり、請求する気力がなくなったりします。
離婚したいとお考えであれば、お早目にご相談ください。