自衛隊の妻のための離婚相談
千葉県には松戸、習志野、下志津、木更津、館山、峯岡山など、自衛隊の駐屯地が多数あります。
そのため、とびら法律事務所では、自衛官の妻(または夫)や自衛官自身の方からの離婚相談を多数お受けしています。
自衛官(防衛省職員)の給与制度や資産形成には、定年年齢が55歳前後に設定されていることなど民間企業とは異なる部分が多く、財産の把握にも注意が必要です。ポイントとなりやすい点を解説していきます。
1 婚姻費用、養育費の算定について
夫婦は、別居をしても籍が入っている間は、主に収入が高い方(または子どもを育てていない方)から低い方(または子ども育てている方)に生活費を支払う義務があります。この生活費のことを婚姻費用と言います。夫が自衛官の場合は、数年ごとに転勤がある場合が多く、妻は転勤についていくために仕事を継続しにくく、収入が高い仕事につきにくいという現状があります。そのため、離婚を考える際は、別居後の生活費の不安がどうしてもつきまとうことになります。
一方で、自衛官の方は安定した収入を得ている公務員ですので、婚姻費用の支払い逃れが起こりにくいという特徴があります。仮に夫が任意で支払わない場合は強制執行も可能です。。
離婚後の養育費についても、取り決めた後に支払わなくなることが社会問題としてニュースになることがありますが、夫が自衛官の場合は、きちんとした取り決めをすれば回収不能になるリスクを大きく下げられます。
婚姻費用や養育費は、自衛官の妻が離婚を考えたときには、方針次第で有効に活用できますので、安易に低い金額で合意をしないように注意しましょう。
2 財産分与について
(1)退職金
自衛官の方は、階級によって異なりますが、定年年齢が54歳から56歳ころと民間の企業よりもだいぶ早めに設定されています。そのため、離婚に悩んでいる方は早めに対応しないと、自衛官の夫が退職金を受給して、退職金を使いきってしまう可能性があります。勤続年数によっては自衛官の方の退職金は2000万円を超えることも珍しくありません。離婚に悩んでいる方は夫が50歳を超えてきたら、具体的な行動を検討していきましょう。
(2)若年定年退職者給付金
自衛官の方は定年が早いため、定年後60歳までの収入の減少を補うために若年定年退職者給付金という制度が用意されています。定年後2回に分けて支給されるのですが、合計で1000万円以上になる大きな給付金です。
若年定年退職者給付金は、離婚時に法的にどのように評価するのかまだ固まった裁判例はありません。ですが、その性質から考えると、退職金に準じて財産分与で処理するか、もしくは定年後の収入として考えて養育費や婚姻費用に反映するかのどちらかになると考えられます。いずれの処理が有利かはケースバイケースですが、多くの裁判官や調停委員は、若年定年退職者給付金の存在自体を知りません。そのため、弁護士の方から積極的にわかりやすく説明しないと理解してもらえません。自衛官の離婚の扱い件数が少ない弁護士も知らないことが多いので、自衛官の離婚の経験が豊富な弁護士に任せることが重要です。
(3)防衛省共済組合の共済貯金
公務員の方は共済組合に加入していますが、ほとんどの共済組合では共済貯金という銀行預金のような制度を用意しています。共済貯金は、一般の銀行預金よりも高い金利が付くので、毎月給与天引きで貯金をしていることが多いです。離婚時にこの共済貯金が思っていたよりも多かったということで、思わぬ高額な財産分与を得ることもありますので、離婚を考えている方は共済貯金の存在を忘れないようにしましょう。
共済貯金の有無は、給与明細から発覚することが多いです。給与明細の控除欄に共済貯金のような項目があったら、天引きで共済貯金を貯めている可能性が高いです。婚姻期間中に貯めた部分は財産分与の対象財産として主張していきましょう。
(4)グループ保険
自衛官の方は、防衛省生協または共済組合でグループ保険に加入していることがあります。グループ保険は民間の保険よりも保険料が安いので、よく利用されています。民間の保険と同じように貯蓄性のある保険もありますので、財産分与の際には忘れずに請求したいところです。
3 年金分割について
将来受け取れる年金額を公平にする制度として年金分割という制度があります。まれに専業主婦や夫の扶養に入っている場合だけ請求できると勘違いされている方がいますが、妻が扶養を抜けて厚生年金に加入している場合でも請求できます。婚姻期間中の収入が夫よりも少ない場合は、請求することを忘れないようにしましょう。
平成27年10月に共済年金と厚生年金が一元化されました。年金分割に必要な「年金分割のための情報通知書」という書類を取り寄せる方法として、年金事務所に問い合わせる方法と共済組合に問い合わせる方法の両方があります。夫の勤務先の関係部署である共済組合に連絡するのはハードルが高いと思いますので、年金事務所に連絡することをお勧めいたします。
>>年金分割について
4 早めに自衛官の夫との離婚に詳しい弁護士に相談を
自衛官の夫との離婚は、防衛省特有の制度を理解していないと、財産の所在もわからないことが多いです。また、自衛官である夫は、妻が詳しいことはわからないだろうと高をくくって、積極的に財産開示や収入の開示をしないことも多いです。そのため、自衛官の離婚に詳しい弁護士に早めに相談して、今後の見通しを持つことは非常に重要です。
仮に夫が任意で財産開示をしてくれない場合でも、弁護士であれば弁護士会照会や調停時の調査嘱託などの制度を使って、財産調査を行っていくことが可能です。
さらに、悲しいことに、夫からモラハラや暴力を受けている場合は、弁護士が代わりに相手と交渉しますので、精神的なご負担が減ります。
弁護士に離婚問題を依頼するメリット
弁護士に離婚問題を依頼すると、以下のような法的なメリットがあります。
- 妥当な条件や見通しを知ることができる。
- 協議離婚、調停離婚、裁判離婚の手続きを任せられる。
- 書面を作ってもらえる。
- 提出する証拠を選んでもらえる。
- いつでも法的な質問ができ、疑問を解消できる。
- 過去の類似ケースについての解決策を聞くことができる。
- 裁判所に対等に意見できる。
弁護士に依頼した場合、法的なメリット以外にも以下のようなメリットがあります。
- 代わりに相手と交渉してもらえる。精神的な負担が軽くなる。
- 感情的に乱されず、冷静に判断できる。
- 相手が無視したり、はぐらかしたりしにくくなる。
- (裁判の場合)裁判所に行かなくていいため、仕事に支障が出ない。
- (調停の場合)調停委員に言いにくいことも代わりに言ってもらえる。
- 交渉や調停のその場で、有利不利、妥当、妥当でないという判断が即決でできる。
- できるだけのことをやったと後悔が残りにくい。
- 力強い味方ができ、1人で戦わなくていい。
千葉県で自衛官の夫との離婚を考えている方は、自衛官の夫との離婚対応の経験が豊富な弁護士法人とびら法律事務所に早期にご相談ください。