婚姻費用2~算定表の金額から控除できるもの・加算できるもの~
弁護士の村上です。
今日は、婚姻費用のうち、算定表の金額から控除できるもの・加算できるものについてご説明したいと思います。
たとえば、ご夫婦双方の年収とお子さんの年齢・人数から、婚姻費用が算定表上「10万円」と算出できたとします。
では、10万円満額をもらえる、支払わなきゃいけない、かというと、そうではないケースが多々あります。
というのも、夫が出て行って、妻に生活費を渡したり、振込んだりしていなくても、実際は引き落とし等で妻子にかかる費用が夫の給与口座から支払われているケースが多くあるからです。
この場合、夫の口座からの引き落としを全て妻に変更すれば10万円満額もらえますが、夫に負担してもらい続けるとなると,夫が負担しているものを10万円から控除し,残りの金額を支払ってもらうことになります。
控除されるもの
一番多くあるのは、「住宅ローン」です。
以前のブログ婚姻費用に住宅ローンは含まれるか?でもご説明しましたが、まず、婚姻費用を受け取る人が住んでいる住宅のローンを、婚姻費用を支払う人が払っている場合は、ローンの全額ではないものの、住居関係費として数万円(ケースによって額は異なります)は婚姻費用から控除します。
もちろん、婚姻費用を受け取る側の人が同居中の住居を出て、自分でアパートを賃貸したり、実家に戻ったりしている場合には、住宅ローンの支払いにより何の恩恵も受けていませんから、婚姻費用からの控除はありません。あくまで控除されるのは、婚姻費用を受け取る側の人が住宅ローンのついている住居に住み、そのローンを婚姻費用を支払う側の人が支払っている場合です。
また、光熱費、妻の携帯電話、妻が契約者の生命保険・医療保険、お子さんの学校費・幼稚園・保育園代なども婚姻費用に含まれますので、これらが夫口座から引き落としになっている場合は、10万円から控除する必要があります。
住宅ローンと違って、これらの費用は夫名義の負債ではないですし、夫の資産形成に資するわけではないので、基本的には夫が負担している満額を婚姻費用から控除することになります。
加算されるもの
次に、算定表上10万円となっていても、加算してもらえるものもあります。
代表的なものは、お子さんの私立学校の教育費です。
ただ、婚姻費用を支払う側の人が私立学校に行くことを容認していたような状況が必要です。
たとえば、既に別居して月日が経過し、お子さんの教育に婚姻費用を支払う側の人が全く関与せず、私立学校に行く合理性もなく、逆に支払う側の人は私立への進学を明確に拒否していたというような事情があった場合には、加算されないこともあります。
とはいえ、多くのケースでは、お子さんの進学先ですから、婚姻費用を支払う側の人も事実上容認しているケースがほとんどにはなってきます。
加算される額は、個別のケースによって異なります。
計算方法は、実際にかかっている学費から、算定表上考慮されている公立学校教育費相当額を控除し、ご夫婦の年収の割合に応じて負担させるという方法が一番とられていると思います。
他の計算方法もありますが、少し説明が難しくなるのでここでは割愛します。
なお、塾代や習い事代の加算は、原則として非常に難しいです。
相手も積極的に同意していて、お子さんの事情からいって当然通わなければならないというような事情があれば加算が認められる可能性はあると思います。
とにかく、もらう側としても支払う側としても、細かい生活費を誰がどのように負担しているかという認識をしっかり持っておくことが大切です。
円満なときはあまり考えていないかもしれませんが、いざ別居なり離婚となると、生活費をめぐって、凄まじい争いが繰り広げられることになります。



